【旧劇を解説】難解な『Air/まごころを、君に』のストーリーを徹底整理!何が起きたか?誰がどうなった?

エヴァンゲリオン30周年リバイバル上映で再び注目されている旧劇場版完結作、『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』。

TVシリーズの最終2話とは異なる結末を描き、公開当時、社会現象を巻き起こした本作ですが、「展開が急すぎて何が起きているかわからない」「専門用語が多くて混乱する」という声をよく聞きます。

本記事では、この難解な作品のストーリーを、「何が」「誰によって」「どうなった」という3つのポイントに絞って、わかりやすく解説します。


1. 映画開始前の状況整理:なぜ世界は崩壊に向かったのか?

この映画が始まる直前、NERV(ネルフ)本部と主人公シンジの精神状態は、極度の危機に陥っていました。

登場人物 / 組織状況と抱える問題
碇シンジ親友の渚カヲルを自分の手で殺し、精神的に極度の絶望状態。「誰も助けてくれない」「もう何もしたくない」と自暴自棄になっている。
NERV第3新東京市を管轄していたNERVは、裏で「人類補完計画」を進めていたことがバレ、国際的な秘密組織であるゼーレと、日本政府・国連直属の戦略自衛隊(戦自)に裏切られ、攻撃を受けている。
特務機関NERV(ゲンドウ)ゲンドウは、ゼーレの計画ではなく、自分自身の目的(妻ユイとの再会)のために、補完計画を強引に発動させようと準備していた。

🎬 前作の状況をおさらい

本作の冒頭は、前作『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』の「REBIRTH」パートの続きです。NERVへの総攻撃がなぜ始まったのか、詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。

[【旧劇解説その1】『シト新生』はどんな映画?] (https://image-blog.com/?p=23)


2. ストーリー前半:絶望的な市街戦「Air」編

映画のサブタイトル「Air」にあたる前半は、前作『シト新生』の「REBIRTH」パートの続きであり、戦略自衛隊(戦自)によるNERV本部への容赦ない総攻撃と、エヴァパイロットたちの最期の戦いが描かれます。

出来事内容結末
NERV本部への侵攻戦略自衛隊がNERVを制圧するために侵入し、職員たちは次々と殺害される。リツコはトラウマ的な記憶を呼び起こされ、冬月は計画の行方を見守る。ミサトはシンジを助け出し、シンジをエヴァ初号機に乗せるべく射出カタパルトへ向かう。リツコはゲンドウを止めようとして失敗し、死亡する。
アスカの覚醒と奮戦絶望しきっていたアスカは、母の魂が宿る弐号機とシンクロし、覚醒。「死ぬのは嫌」という強烈な生への意志のもと、弐号機で戦自を一掃する。その直後、ゼーレが用意したエヴァ量産機9体が空から現れる。アスカは奮戦するが、最終的にロンギヌスの槍のレプリカに貫かれ、弐号機は惨たらしい姿で大破。アスカは生死不明となる。
シンジ、初号機へミサトはシンジを初号機に乗せる直前、シンジを奮い立たせる言葉を残し、銃撃を受け死亡。シンジは絶望と虚無感に囚われたまま、初号機に乗り込む。シンジは弐号機が破壊された現場を目撃し、精神的な限界を迎える。

3. ストーリー後半:人類補完計画の発動「まごころを、君に」編

映画のサブタイトル「まごころを、君に」にあたる後半では、世界規模の「人類補完計画」が実行されます。

登場人物役割と行動補完計画の行方
碇ゲンドウNERV本部の地下深くで、アダム(またはそのコピー)を宿した右手を使い、リリスの魂を持つ綾波レイと接触し、補完計画を発動させようとする。ゲンドウの思惑とは裏腹に、レイは「私はあなたの言いなりじゃない」と拒絶。ゲンドウから離れ、シンジのもとへ向かう。
綾波レイリリスの肉体と一体化し、巨大な姿(巨大綾波)となる。そして、すべての魂を一つにする「サードインパクト」を引き起こす。レイはシンジの無意識の願いを具現化する存在となり、人類の魂をLCL化し、巨大な黒い月(リリスの本体)へと回収していく。
碇シンジ絶望の淵で、巨大綾波(リリス)と対話。シンジは「誰も傷つかない世界」を求め、人類の魂が溶け合うことを望む。サードインパクト発動。全人類のATフィールドが消失し、肉体が崩壊してLCL(オレンジ色の液体)になり、一つの集合意識へと融合していく。

【最重要用語】人類補完計画とは?

「個々バラバラで、互いに傷つけ合う人間の心を、一つに統合し、完全な生命体へ進化させる」という計画。結果として、人類の肉体はすべて溶けて一つになり、他者のいない、誰も傷つかない世界(集合意識)が実現します。


4. 衝撃の結末:シンジが選んだ「生きる」ということ

集合意識の中で、シンジは様々な人物と対話し、自分が本当に望む世界について考えます。

  • 「閉じた世界」の拒絶: シンジは、他者がいない、自分だけの世界では、自分も存在できないことに気づきます。それは結局、「孤独」から逃げているだけで、何の解決にもならないからです。
  • 「他者がいる世界」の選択: シンジは、傷つくことを恐れながらも、他者がいる現実の世界へ戻ることを選びます。
  • 補完計画の終焉: シンジの選択により、人類補完計画は頓挫し、LCL化した魂が再び個別の肉体を取り戻す可能性が生まれます。

✅ 浜辺のシーンとアスカの「気持ち悪い」

最終シーンで、シンジは赤い海が広がる砂浜に、隣で眠るアスカと共に人間の姿で戻ります。

  1. シンジの行動: 目覚めたシンジは、隣にいるアスカの首を絞めます。これは、LCL化の融合から戻ってきたシンジが、目の前にいる「自分とは異なる他者(アスカ)」の存在を、暴力という形でしか確認できない未熟さの表れと解釈されます。
  2. アスカの返答: アスカはシンジの手を振り払い、彼に触れながら一言「気持ち悪い」と呟きます。

この「気持ち悪い」という言葉は、LCLの海(すべてが溶け合った状態)から抜け出し、再び別個の存在として生きる現実、つまり「気持ち悪くても生きる世界」を受け入れたアスカの、強い「生への意志」を表していると解釈されています。


5. まとめ:旧劇が問いかける「生きる」ということ

『新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に』は、徹底的な絶望と孤独を描いた後に、シンジとアスカという「他者」がいる現実に戻ることで幕を閉じました。

この作品は、私たちに「逃げずに、傷つけあうことを恐れずに、他人と共に生きる意志を持てるか」という、普遍的で強烈な問いを投げかけているのです。

リバイバル上映のこの機会に、ぜひ劇場でそのメッセージに触れてみてください。

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